金星探査衛星の名「あかつき」に なぞの風、解明に挑む
22時57分
金星に吹く風や気候などを調べる日本初の金星探査衛星「プラネットC」の名称が「あかつき」に決まった。夜明けの空が白んで金星が美しく輝く時間帯から命名し、宇宙航空研究開発機構が発表した。あかつきは来春ごろにH2Aロケットで打ち上げられ、半年かけて金星に到着。金星を回りながら約2年観測する予定だ。また、あかつきに載せるメッセージの募集も始まった。
あかつきは、ハレー彗星(すいせい)に接近した「すいせい」、火星に行った「のぞみ」に続く惑星探査機。金星は、ほとんど自転していないのに強い東風が吹いているのがなぞで、世界初の惑星気象衛星として、この解明に挑む。
あかつきに載せられるメッセージや応募者の名前は、12月25日必着で、宇宙機構のウェブサイト(http://www.jaxa.jp/event/akatsuki/index_j.html)で受け付ける。(東山正宜)
衛星かぐやが月面に謎の縦穴発見 基地好適の空洞が地下に?
月の表面に、地下深くに通じる直径60〜70メートルの縦穴が開いているのを、宇宙航空研究開発機構のチームが月周回衛星かぐやの探査データから24日までに発見した。
月でこうした縦穴が見つかったのは初めてで、チームは、穴の底に横長の空洞が広がっている可能性が高いとみている。実際に空洞が確認されれば、将来の有人月探査基地の有力な候補になるという。
チームは、かぐやの地形カメラや近赤外線カメラがとらえた月面の画像を詳細に分析。「嵐の大洋」と呼ばれる平らな地形に縦穴を発見した。
太陽光が穴の壁に作る影の形状などから、縦穴は深さ約60メートルまで真っすぐに伸び、深さ80〜90メートルに平らな底面が広がっていると推定した。
地球では、火山の溶岩が流れてできた地形の地下に「溶岩トンネル」などと呼ばれる空洞ができることがある。
嵐の大洋にも溶岩が流れた痕跡があるうえ、縦穴は通常、地下に空間がなければできないことからチームは、今回の縦穴は溶岩トンネルの天井の一部が崩落してできたと結論付けた。チームの計算では、地下空洞は高さ20〜30メートル、幅最大400メートル、長さ数十キロに及ぶ可能性があるという。
チームの春山純一宇宙機構助教は「空洞内部は、月面のような激しい温度変化がなく、宇宙放射線や隕石の飛来も防ぐことができ、月探査基地に最適だ」と話している。成果は近く、米地球物理学会誌に掲載される。
18:22
直江兼続は天皇の倍額を寄付 北野天満宮の屋根修理で
安土桃山時代から江戸時代初期の武将直江兼続(1560〜1619年)が、学問の神様、菅原道真を祭った北野天満宮(京都市上京区)の屋根修理費として、天皇の寄付額の倍に当たる米100石を寄付したことを示す古文書が同天満宮に残っていたことが24日、分かった。
記載された人の中では最高額で、鑑定した藤井譲治京都大教授(日本近世史)は「学問に秀でた兼続が、天満宮を支援したのでは」と推測。兼続の“太っ腹”ぶりを示す史料として注目されそうだ。
古文書は1588(天正16)年の「北野檜皮葺奉加帳」で、北野天満宮が所蔵。修理費用を負担した人の名前と金額が筆書きされ、最初のページには身分の高い7人が掲載されていた。
6人目に直江兼続を示す「越後 直江山城守殿」と書かれ、寄付額は「米百石」だった。
当時の換算では約20両で、黄金2枚分に相当。同じページには「位御所様 黄金壱枚」などの記載もあり、後陽成天皇と、正親町天皇だった正親町院がそれぞれ黄金1枚を寄進したことを示している。
藤井教授によると、兼続は、生まれ故郷の越後国の一部が室町時代に北野天満宮の領地だったため寄付したとも考えられるという。
また豊臣秀吉の妻ねねは「黄金壱枚 政所殿様」とあり、後陽成天皇や正親町院と同額だった。ねねの次の行には「黄金弐枚 密々」と記され、秀吉の名前を伏せて、黄金2枚の寄付額だけを記載した可能性があるという。
17:25
日本漫画、大英博物館に大抜擢 「宗像教授」展開催へ
15時12分
【ロンドン=橋本聡】歴史と文化の殿堂、大英博物館が、古代史のナゾをテーマにした日本の漫画「宗像(むなかた)教授」シリーズの原画展を11月から開く。作者の星野之宣(ゆきのぶ)さん(55)と、漫画好きの日本研究者ニコル・ルマニエールさん(48)の出会いから生まれた同博物館初の漫画企画展。250年の伝統と格式を重んじる大英博も「マンガ」を日本文化の代表格と認めた。
シリーズの主人公は民俗学者の宗像伝奇(ただくす)教授。各地の遺跡や伝説を訪ね歩き、古代史ミステリーを解き明かす。小学館の「ビッグコミック」に04年から連載。テレビ化もされている。
札幌に住む星野さんに話が持ち込まれたのは今年8月。「ニコルさんがわざわざ訪ねてきて『大英博で展示したい』と。そんな大それたこと、と面食らいました」
ニューヨーク生まれのルマニエールさんは日本のアニメを見て育ち、「鉄腕アトム」を愛読。考古学を学び、英国の大学で日本美術を教えたあと06年から3年間、東大大学院の客員教授をしていた。
ある日、東京の本屋で立ち読みしていて「宗像教授」に目を奪われた。「絵がきれいで、歴史をみる視点もおもしろい。手塚治虫も水木しげるも好きですが、星野先生のがいちばん好き」。年間600万人が訪れる大英博とは、縄文の土偶の展示会などを通じてつながりがあった。大英博日本セクション長のティム・クラークさん(50)は「欧米でも人気のマンガと大英博を考古学で結びつける実験」とゴーサインを出した。
10月上旬、星野さんは30枚余りの原画を手に初めてのロンドンへ。宗像教授のイメージは博物学者の南方熊楠(みなかた・くまぐす)から得ている。その熊楠は明治時代に大英博の調査員をしていたことがある。「ふしぎな縁を感じました」。星野さんはロンドンで新たに2枚の原画を描き下ろした。
星野さんはいま、宗像教授が大英博を訪れ、欧州の古代のナゾにいどむ新シリーズの構想を練っている。「来春にはスタートさせたいですね」
原画展は11月5日から2カ月間。朝日新聞が改修に協力したことから「朝日新聞ディスプレー」と名づけられた展示室が会場になる。