観光客減、場所代値上げ…モンマルトルの丘、あえぐ画家

23時54分
 【パリ=飯竹恒一】パリ北部モンマルトルの丘で絵を売って生計を立てる画家たちが「冬の時代」にあえいでいる。折からの経済危機に加え、場所代にあたる区画使用料を払わない「不法営業」や「丘の絵」を名乗る中国製絵画との競争にさらされて売り上げが激減。さらにパリ市が区画使用料を3.5倍に値上げすることを決めたことが追い打ちをかける。丘には重苦しい雰囲気が漂っている。
 「今日の午後は1枚だけ」。若手の似顔絵画家がぼやいた。「稼ぎは数年前の半分。よく買ってくれた日本人観光客が減ったのが痛い」
 丘には1平方メートルの区画が149あり、1区画当たり2人の画家が「営業権」を割り当てられている。パリジャン紙によると、区画の年間使用料は今回の値上げで160ユーロ(約2万1千円)から554ユーロ(約7万2千円)に増えた。「わずかな額のようでも、家賃の支払いもやっとの貧しい画家には負担だ」と、50年ここで絵を描き続けているアティリオ・クレルジャさん(70)は言う。
 モンマルトルの区画使用料は長年据え置かれてきたことから、市側は9月、見直しを進め値上げに踏み切った。
 ルーマニア出身の女性画家ロディ・イリエスコさん(55)は「観光客を当て込んで、周辺で使用料も支払わずに絵を売る行為も多い」とこぼす。また、周囲の画廊などでは安い中国製の絵がモンマルトルの作品として並び、客を奪われているという。
 セーヌ川右岸にある丘は、19世紀半ばに安いアパートやアトリエを求めて画家たちが集まるようになった。